ソラから始まる、地域共創のまちづくり
宮崎県に本社を置く航空会社、ソラシドエア。空を飛び、地域を結ぶ華やかなイメージがありますが、実は彼らは地域のまちづくりの担い手でもあります。その象徴的な取り組みのひとつが、例年秋頃に開催されているグリーンスカイフェスタです。
淑徳大学では、多摩大学、ソラシドエア、そして宮崎県内7つの自治体と連携し、このイベントを通じて地方創生を提案するプロジェクトに挑みました。私が受け持つゼミの学生たちが担当したのは、宮崎県の中部に位置する綾町(あやちょう)を含む4自治体です。
映えを求めていた学生たちの動揺
「宮崎へ行こう」と呼びかけられ、学生たちの本音は複雑だったことでしょう。綾町が誇る有機農業や工芸といったコンテンツは、SNSの世界に慣れた学生たちには、はじめは少し地味に映ったようです。「隣のチームはカヤックやサップをするのに、私たちは農業……?」と、隠しきれない落胆が漂いました。
しかし、このギャップこそ、生きた学びへの入り口です。
教室を離れ、五感で知る本物の価値
綾町に降り立った学生たちを待っていたのは、泥にまみれる体験でした。そして予想に反し、現場での学生の主体性は感心すべきものでした。「私、草抜き得意です!」と率先して畝(うね)に座り込み、農家さんに勧められるまま収穫したてのピーマンやナスを丸かじり。「なんかフルーツみたい!」という驚きの声。それは、現場でしか味わえない、五感を通じた本物との出会いでした。

夜には役場でイベントに向けた会議を行います。疲れた表情の学生たちを、ソラシドエアや役場の皆さんが温かく、時にはプロの視点で鋭く見守ってくれました。その期待に応えるように、学生たちの口からは現場を見たからこそ言えるアイデアが次々と飛び出しました。

1件の電話が教えてくれた、小さな奇跡
学園祭の模擬店で、学生たちは「綾町のネギ使用」という大きな看板を掲げました。自分たちが草抜きをしたあの畝のネギを仕入れ、「とんぺい焼き」として提供したのです。模擬店での利益のみを追求するのではなく、綾町の有機農業や生産者への支援、栄養の偏りの改善を視野に入れたこの取り組みは、SDGsの「飢餓をゼロに(目標2)」につながる有意義な実践の機会となりました。

後日、驚くべき知らせが届きました。綾町役場に、学園祭でネギを食べたお客様からネギに関する問い合わせがあったというのです。「たった1件ですが、これほど嬉しい反響はありません」という職員さんの言葉に、学生たちは喜びの叫び声をあげるのでした。

そして、グリーンスカイフェスタでも、デジタルな手法が主流の中、学生たちはあえて手づくりのチラシを配りました。自分たちが肌で感じた綾町の魅力を、一人ひとりに手渡す。その泥臭い実践こそが、確実にお客様の心を動かすことにつながったはずです。
未来を創る、小さな一歩
今回、学生たちが実践したのは、社会を動かすような大きな政策提案ではありません。しかし、まず「自分ができること」を提案し、実行に移すという着実な一歩でした。
はじめはモチベーションが低かった学生でしたが、現場で五感を刺激され、主体的に動き出す。地域の人々、関係する企業の方々がいて、その輪の中に学生という新しい視点が加わり、大きな化学反応を起こす。このプロセスこそが、持続可能な地域共創(SDGs目標11)の原動力になる。今回の取り組みはその証左ではないかと思うのです。
