モリンガとは?
モリンガは熱帯アジアやアフリカに広く分布する木本植物で、栄養価が非常に高く、「奇跡の木」とも呼ばれます。日本では沖縄や奄美大島での栽培が主でしたが、近年の温暖化により、埼玉県さいたま市のような本州の平地でも生育が可能となってきました。このモリンガを地域社会や環境課題の解決に生かすことを目指し、さまざまな実践が始まっています。
応用生態工学から環境研究へ
筆者は大学院時代から都市の熱環境や水の浄化、生態系保全など、環境に関する研究に30年以上携わってきました。温暖化の進行により、これらのテーマはより重要性を増し、相互につながり合うようになっています。その中で出会ったのが、モリンガという植物でした。
モリンガとの出会い
モリンガの種に含まれる油分が、水浄化のための天然凝集材として有効であるという情報に触れたことが、モリンガとの最初の接点でした。アジア出身の留学生たちはその存在を知っていたものの、当時の日本本州ではモリンガの栽培事例がなく、研究に取り組むには至りませんでした。
見沼田んぼでの挑戦
転機となったのは、3年前に見沼田んぼでモリンガの栽培を始めた地域の方との出会いでした。実際に育ててみると、モリンガは驚くほど大きく育ちました。これを機に、埼玉大学ではCO2吸収量を実測し、1本あたり約3kgを吸収することを確認。この値はインドの情報に比べれば小さいものの、自然界では十分に高い水準であり、地球温暖化対策の素材として現実的な評価ができるものでした。
モリンガがもたらす環境効果
CO2吸収だけでなく、葉からの蒸散による気温低下や、日除け効果、独特の芳香によるドライミスト効果など、モリンガの群生環境そのものが快適な空間を創出します。つる植物による「緑のカーテン」以上に、モリンガのもつ迫力と機能性は高く評価できます。
日本ならではの活用法を模索して
本州の冬にはモリンガは枯れてしまい、種も実らないため「日本での栽培は無意味」と言われることもあります。しかし、半年間で育ったモリンガの幹や根は驚くほど発達しており、幹は水を貯める構造を持ち、乾燥させれば複雑な繊維質となります。これを炭にしてCO2を固定するだけでなく、工夫次第で多様な用途が期待されています。

未来に向けての探究
研究室では現在、モリンガ幹の繊維を用いた生分解性バイオチップの開発や、葉を活用したメタン発酵によるエネルギー資源化など、先進的な試みを進めています。これらは、日本の気候条件でしか得られない、新たな科学的価値を生み出す「探究の種」として、今後の理科教育や地域との連携にも広がっていく可能性を秘めています
【街キャンメンバー さとう】
藤野先生この度はご多忙のところご寄稿いただきありがとうございました。
モリンガはスーパーフードとして名前を聞いたことがありましたが環境問題にも活用できると知ってとても驚きました。
今後も活動についてご教示いただければと思います。