【学びの旅へ出発!】 マルタで拓く、探究と挑戦の学び

本企画では、全国の先生方に多様なスタディツアーの事例をご紹介いただいています。各ツアーがどのような背景や目的のもとで企画されたのか、参考情報をぜひご覧ください。第5回は、近畿大学附属高等学校 大川稔和先生よりご寄稿いただきました。

スタディツアーの背景と目的

本校は、約20年以上のマルタ語学研修を見直し、生徒の主体性と探究力を育む新しい海外スタディツアーを構築しました。どうすれば生徒を、受け身の参加者から「探究者」へと変えられるのかだろうか。手厚く「お客様」として扱われる環境ではなく、自ら学ぶ「探究者」を育成するため国際バカロレア(IB)のディプロマ・プログラム(DP)の教育理念を取り入れ、株式会社JTB、有限会社エッセンシャル・エデュケーション・センター(EEC)と連携しました。その設計には、クルト・ハーンと、デイビッド・コルブの教育理論が融合されています。異文化の中で試行錯誤し、仲間と支え合いながら学ぶこの旅は、生徒が国際的な視野と主体的な学びの姿勢を身につけることを目的としています。

具体的な活動と学びの場面

この研修の核となるのが、CAS(Creativity, Activity, Service; 創造・活動・奉仕)の考え方です。

Activityでは、姉妹校であるSt. Martin’s Collegeとのスポーツ交流やゴゾ島でのフォトロゲイニングに挑戦します。特にフォトロゲイニングは負荷の高い活動で、生徒たちは地図だけを頼りに4~5人のチームで島内約18キロの道のりを踏破します。ルートをめぐって意見がぶつかり、疲れて足がとまる場面もありますが、そうした経験を乗り越えてたどり着いたゴールは、何よりの達成感となり、確かな自信と仲間意識を育てます。

Serviceでは、日本文化紹介イベントと、街頭インタビューを中心としたmini-CASを実施します。特に、mini-CASでは、生徒たちが自ら問いを立て現地の人々に話を聞き、地域課題に対して自分たちにできる行動を考えるプロセスを大切にしています。まずは、英語で話しかける挑戦する態度が重要であり、さらにどんな聞き方をすれば伝わるのか、相手の話をどう受け止めるか、時には断れることも含めて、ひとつひとつが大きな学びのきっかけとなります。

Creativityの要素としては、研修中に撮影した写真や動画をもとに、帰国後にプロモーション動画を制作します。次年度の後輩に向けて、自分たちの経験をどう伝えるかを考えるこの取り組みは、単なるまとめではなく「この経験にどんな意味があったのか」を改めて振り返る機会となっています。

「内なる変化」を生むリフレクション活動

この研修では、毎晩のリフレクションの時間が欠かせません。教員が3名、EECスタッフが1名引率しているため、教員とスタッフがファシリテーターの役割を担います。個人で感情を可視化するワークや、仲間と対するグループリフレクションを通じて、学びを「気づき」から「意味づけ」へと深めていきます。時には葛藤や涙も見られるこの時間こそが生徒の内面に変化をもたらし、主体的な学習者としての一歩を支えています。

 

生徒たちの成長や成果

研修後に行うアンケートから、生徒たちは語学力というスキル以上に、物事に向き合う「姿勢」の大きな変化を示す声が多数寄せられました。「自分から現地の人に話しかけられるようになった」という自信、「完璧な英語より伝えようとする気持ちが大切」という気づきがその例です。また、グループ活動での対話を通し、協働の難しさとやりがいを学んだようです。

今後の展望

研修を通じた一過性の気づきを、日常の学びにどのように繋げているかが次なる課題です。今後は、事前学習や教科横断型のアプローチをさらに取り入れ、IBの理念を日常の教育実践へと橋渡しする仕組みを強化していきたいと考えています。また、IB認定校以外にもこのようなIBの教育手法を用いた探究型の研修プログラムが浸透していくことを願っています。


【街キャンメンバー おおもり】

大川先生、この度はご寄稿いただきありがとうございました!常にチャレンジされている先生とお話する度に新しい気づきをいただいており、今回のマルタ研修もとても興味深く、勉強させていただきました。また面白い企画があればぜひお聞かせください。