そうべつアウトドアネットワーク 都我剛之さん
1976年生まれ。広告代理店勤務などを経て株式会社イースリーにて2008年よりサッカーのメディアを立ち上げ、スポンサーとの協働による様々な企画やプロジェクトを推進。2019年に株式会社ROOTSを創業し新たに地方創生事業を開始。さまざまな自治体の活性化に取り組む中で2023年7月より地域活性化起業人として北海道の壮瞥町に着任。東京と北海道の2拠点生活を送りながら壮瞥町のアウトドア資源を活用した町の活性化に取り組んでいる。
壮瞥町の魅力をズバリ表すと何でしょうか?
やはり火山が一番のシンボルですね。かつて麦畑だったところが1943年に突然隆起してできた昭和新山はまさに自然資源!人間が新しく作ろうと思っても作れません。昭和新山は比較的若い山で、岩肌がゴツゴツむき出しになっていて、天然の「ビッグサンダーマウンテン」のようです。

また、誕生から80年以上経っても未だに噴気をたなびかせている昭和新山や、20〜30年に一度噴火する有珠山のすぐ麓で人々が暮らしていますが、世界中どこを見ても火山からこんなに近くに暮らしがあることは珍しいそうです。僕は壮瞥町に移住し二拠点生活を始めて半年ほどでして、根っからの壮瞥人でないからこそ、人と火山の共生をとても新鮮に感じています。
具体的な恵みとしては温泉や農作物ですね。洞爺湖温泉や壮瞥温泉などの温泉街があり、火山灰が含まれた良い土壌のおかげで農作物が育ちます。火山から産業が生まれるとはこのことだなと感じます。
実際に壮瞥町を訪問した高校生に、見てほしい、体験してほしいことはございますか?
たくさんありますが、特に星空を見てほしいです。他の地方でも見られるかもしれませんが、日本で3番目に星が綺麗と評価されたこともあるほどなんです。夜は本当に真っ暗になり、そんな中星空を見ると、シンプルだけど本当に感動します。あとは、キャンプ場の湖畔から見る夕陽もとても綺麗です。

壮瞥町内での今の困りごとは何でしょうか?
やはり観光客の方の滞在時間や日数が短い点が課題です。年間の観光客数は約200万人という記録はあるのですが、ほとんどがツアー団体客で、写真を撮るだけで滞在時間は5分程なんてこともあります。実際に町に滞在をして町の背景や歴史など、そういうものを感じてもらえるような環境は作りたいなと思っています。キャンプ場もキャンパーだけではなく教育旅行や探究学習旅行の拠点になり得るなというふうに思っていて、キャンプ場を起点にしたモデルプランも作っていきたいです。
教育旅行のテーマとして、他に都我さんがおすすめされるものはありますか?
壮瞥町は、防災教育に結構力を入れています。ただ防災ではなく、「減災」という視点で教育をしていますね。自然の現象は必ず起こるものという前提で、起こったときに被害を防ぐのではなく、いかに減らすかに焦点を当てています。
昭和新山は私有地のため一般開放はしていませんが、地元の小学生や周辺地域の住民向けに、「学習」を目的とした洞爺湖有珠火山マイスターによるガイド付きの「登山学習会」が年に数回実施されています。実際に歩くと、もともと川だった場所が200mほど隆起している様子が見られて、20~30年に1回は噴火する火山だからこそ、よりリアリティをもって自分ごと化につながる減災教育になっていると思います。

また、周辺地域を含めて、ユネスコ世界ジオパークや日本ジオパークに認定されたエリアでもあり、地形や地質から地球の過去、現状を知ったうえで、どんな未来につなげるべきかを考える機会にもなると思います。ガイドさんが教えてくれないと素通りしてしまうような場所でも、少し教えてもらえるだけで一気に見方が変化し探究するきっかけにつながるかもしれません。
昭和新山の登山には規制がかかっていますが、同じ有珠火山ファミリーである有珠山にロープウェイがあり、展望台から昭和新山をみることができます。また、元々昭和新山は三松正夫さんという個人の方の所有物でした。三松さんは昭和新山が生成した当時、壮瞥の郵便局長で、山を荒廃から守るために、また地元住民の生活を守るために一帯の土地を買い取りました。昭和新山の成長を定点観測で記録した資料は「ミマツダイヤグラム」とよばれ世界的に貴重な火山活動の記録になっています。
他には、六次産業も面白いテーマです。道の駅では地元の農作物や果物が販売されているのですが、それらを活用した新しい特産品をのアイデアを考えてもらえたりすると面白いと思います。ふるさと納税の返礼品にも展開できたりするとさらに面白いですね。
今後の展望について、最後に一言お願いします!
僕が所属しているそうべつアウトドアネットワークは、アウトドアのコンテンツを中心に活動をしている一般社団法人ですが、そこに留まらず壮瞥の町全体のPRにつなげられる団体にしたいですね。
町全体の話だと、先程もお話しましたが、すごくいい素材はあるのですが、それがまだ点でしかないのです。それを線にして面にして、町の魅力を知ってもらうようなことができたらいいなというふうには思います。まだ知られていないもったいないところが非常に多くあるので、それをちゃんとコンテンツにしていきたいという想いです。
あとは壮瞥に限らず、日本の地方では少子高齢化で産業が縮小しサービスが低下している。田舎に行けば行くほど、もうそれが顕著になっています。集落で唯一あった商店がなくなり、バスが減便になり、小学校中学校も廃校になるというような話はしょっちゅう聞こえてくるのでそれをなんとか打破したいというのが個人的な思いです。特効薬もないのですが、ただ指をくわえて待っているだけという感覚がすごく嫌なので、何とか動いていきたいなという想いですね。
【街キャンメンバー おおもり】
都我さん、この度はインタビューさせていただきありがとうございました!町の魅力をひとつひとつ丁寧に伝えて下さる姿がとても印象的でした。
壮瞥町、またそうべつアウトドアネットワークに関心のある先生方、教育旅行関係者の皆様、ご連絡をお待ちしております。