【学びの旅へ出発!】-「通学するだけの鳥羽」から、「自分が育つ鳥羽」へ- 三重県立鳥羽高等学校 安田 恵理

三重県立鳥羽高等学校では、地域を題材にした授業「鳥羽学」を通して、生徒が自分のまちを見つめ直す学びを実践しています。「通学しているだけの鳥羽では、もったいない」という思いから始まったこの授業は、机上の学習にとどまらず、まちを歩き、人と出会い、体感することを大切にしています。今回は、鳥羽学の立ち上げからフィールドワークによる生徒の変化、そして地域とともに描くこれからの展望について紹介します。

(三重フォトギャラリーより)

通学しているだけの鳥羽では、もったいない

三重県鳥羽市は、国際観光都市として知られ、観光業や漁業を主力産業とするまちです。三重県立鳥羽高等学校は、市内で唯一の総合学科高校として、約140名の生徒が学んでいます。小規模校であるからこそ、地域と密接に関わりながら学べる点が大きな強みです。

鳥羽高校には、地域から学ぶ授業「鳥羽学」があります。この授業は、全校生徒が“鳥羽”という地域を題材に、自分たちの視点で学び、感じた魅力や課題を発信することを目的としています。観光ビジネス系列、総合福祉系列、文理教養系列のいずれの系列でも、地域と結びついた学びが可能ですが、より深く自然・文化・人と向き合うために「鳥羽学」はスタートしました。

私がこの授業を担当することになった当初、不安が大きくありました。教科書のない授業で、どうすれば生徒にとって「通学のためだけに来ている鳥羽」から「自分自身が成長できる場としての鳥羽」へ意識を変えられるのか。そんな問いを胸に、「通学しているだけの鳥羽では、もったいない」という思いを軸に授業づくりを始めました。

机の上だけではなく、鳥羽のまちを体感する

授業当初は、鳥羽の基礎知識を伝えようと手作りプリントを用意しましたが、生徒の反応は薄いものでした。試行錯誤を重ねる中、授業アンケートに書かれていた「鳥羽のまちを歩きたい」という一言に、私ははっとさせられました。

そこから、生徒と対話を重ねながらフィールドワークを取り入れ、鳥羽のまちを実際に歩き、見て、感じる学びへと舵を切りました。海女さんの仕事に触れ、「想像以上に大変だ」と驚いたり、「フィールドワークは楽しい」と声が上がったりと、生徒自身の気づきが少しずつ生まれていきました。

現在は、これまでの学びをもとに、鳥羽市へ成果を発表する準備を進めています。自分たちが感じた鳥羽の魅力を、鳥羽の未来が明るくなるような提案として伝えてほしいと願っています。

鳥羽学の、その先へ

鳥羽学を通して見えてきた次の目標は、生徒が鳥羽のまちを案内できる「ツアーガイド」へとつなげていくことです。自分自身が感じた鳥羽の魅力を、自分の言葉で来訪者に伝える——その経験は、生徒の自信にもなります。

鳥羽高校で学んだ生徒たちが「この学校を選んでよかった」と思って卒業し、鳥羽学を通じて生まれ育ったまちをさらに好きになる。その積み重ねが、将来どこで生きるとしても、自分の原点となる地域を大切に思える土台になると信じています。

鳥羽高校はこれからも、地域とともに歩みながら、生徒一人ひとりの学びの旅を支えていきます。