【探究の種】大学生のアイデアで地域振興を進める ~女子栄養大学 地域振興論実習の取り組み~

女子栄養大学・平口嘉典准教授が担当する「地域振興論実習」では、大学生が川越の農業を学び、地元農産物を活かした食企画を考案・実践しています。農家訪問や収穫体験を通して地域の魅力に触れ、まつりで形にするプロセスから、学生が地域とつながる学びの姿を紹介します。

――女子栄養大学 地域振興論実習の取り組み――

川越市の農業を“食”で盛り上げたい――。
そんな思いから女子栄養大学では2023年より「地域振興論実習」をスタートしました。川越は「小江戸」と呼ばれる歴史情緒豊かな観光地で、近年は年間700万人を超える観光客が訪れています。一方で、中心市街地への来訪者の集中により、交通渋滞やゴミ問題などのオーバーツーリズムが課題となっています。

しかし、市街地から少し郊外へ足を延ばすと、田畑が広がり、米や野菜などの農産物が生産されています。こうした農業地域にも観光客が訪れるようになれば、地域振興につながり、オーバーツーリズムの緩和にも寄与します。
そこで本実習では、学生が“食”を通して地域の魅力を発信する取り組みに挑戦しています。

地域振興論実習とは

地域振興論実習は、女子栄養大学食文化栄養学科の3年生を対象とした実習科目です。7月にスタートし、川越の農業や農産物について学んだ上で、農業振興につながる“食”企画を考案します。そして最終的に、11月23日に開催される「農業ふれあいセンターまつり」で企画を実践します。以下では、2025年度の取り組みをご紹介します。

川越の農業を知る

まず7月に、川越市の農業について学びました。講師は川越市農政課職員の方々です。川越市ではさつまいも、里芋、河越茶、各種野菜など、多様な農産物が生産されていることを知りました。

さらに、11月の農業ふれあいセンターまつりの会場である川越市グリーンツーリズム拠点施設を訪問しました。同施設には体験農園や調理室が併設されています。体験農園では、枝豆、人参、じゃがいもなどの収穫体験を行いました。炎天下でしたが、学生たちは楽しみながら取り組みました。

また、調理室ではほうじ茶づくり体験を行いました。講師は、川越市内で河越茶の栽培から製茶までを手掛ける小野文製茶の小野哲孝さんです。焙烙(ほうろく)という器に茶葉を入れて1分程度加熱すると、お茶の香りが立ち上がり、葉の色が緑から茶色へ変わります。出来立ての茶葉にお湯を注ぎ、その場で試飲を行うと、香り高く深みのある味わいに学生たちは驚きの声を上げていました。

農家を訪ねて

次に、市内で農業生産を営む飯野農園を訪問しました。代表の飯野芳彦さんは江戸時代から続く農家の七代目です。里芋、さつまいも、かぶ、人参など、さまざまな農産物を生産されています。

飯野さんは、落ち葉を堆肥として土壌に還元する「落ち葉堆肥農法」を代々実践してきました。この伝統的な農法は「武蔵野の落ち葉堆肥農法」と呼ばれ、世界農業遺産にも認定されています。飯野さんの農業に対する思いを伺った後、圃場見学を行い、農業生産の現場を肌で感じることができました。

まつりに向けて:学生たちの企画づくり

これらの学びを踏まえ、学生たちは11月のまつりに向けた企画づくりに取り組みました。履修者18名は3チームに分かれ、川越の農産物を活かした“食”企画を検討しました。

チーム親芋は、通常は廃棄される里芋の親芋を活用した五平餅と、河越紅茶を使ったアイスクリームの販売を企画。おいもっこチームは、河越茶のお茶漬け(うなぎ・川越いも・だしの3種類)を販売。じゃんよわチームは、川越いもを使ったクレープづくり体験と川越野菜のスープ販売を行うことになりました。いずれの企画も、川越の農産物の魅力を多くの方に伝えることを目的としています。

学内では複数回の試作を行い、味の調整やオペレーションの確認を実施しました。また、提供方法や包材の検討、チラシや販促物の制作にも取り組みました。さらに事前告知として、学科のInstagram投稿や地元FMラジオ「ラジオ川越」での紹介も行いました。埼玉わっしょい大使のインフルエンサー・エミッフィさんの番組にも出演し、各チームの企画内容を発信しました。

11月23日、まつり当日

――学生のアイデアが形になる

そして迎えた「農業ふれあいセンターまつり」。
当日は調理室を活用し、3チームそれぞれがブースを設けて企画を実施しました。小さなお子さまから高齢の方まで多くの来場者が訪れ、学生たちのアイデアによる川越の食を楽しんでいただきました。

また、食材を提供してくださった生産者の方々も来場され、自身の農産物が学生の手によって新たな食として提供される様子をご覧になり、大変喜んでくださいました。

おわりに

このように、地域振興論実習では川越の農業を“食”を通して盛り上げる取り組みを、毎年メンバーを入れ替えながら実施しています。この記事をご覧の皆さまも、ぜひ川越で農に触れてみませんか。
そして今年11月には、新たなメンバーによる企画が実施されます。ぜひ足をお運びいただければ幸いです。

※女子栄養大学は2026年4月より共学化し、日本栄養大学に名称変更します。