伝統と新しい挑戦が息づくまち
山形県のほぼ中央に位置する河北町は、人口約1万6,000人の自然豊かな町です。山形新幹線のさくらんぼ東根駅や山形空港から車で約10分というアクセスの良さもあり、首都圏からの移動負担を抑えながら、本格的なフィールドワークを組み込める地域です。
河北町は、米づくりを中心とした農業を発展させてきた一方で、室町時代から続く「紅花」の歴史文化を大切に守り抜いてきました。さらに近年では、「かほくイタリア野菜」のブランド化や、野生鳥獣救護所を兼ねた動物園の運営など、時代に合わせた新たな価値づくりにも取り組んでいます。
伝統の継承と、変化を恐れない挑戦。その両方が同居する河北町には、生徒たちの視野を広げる多様な「探究の種」があります。
わずか1%の赤を追う、紅花文化

河北町を語るうえで欠かせないのが、紅花の歴史です。室町時代から栽培が盛んに行われ、収穫された紅花は「紅餅」に加工され、京都や大阪へと運ばれる紅花交易によって町は大いに繁栄しました。
河北町紅花資料館では、今も伝統的な紅餅を用いた紅染め体験が行われています。黄色い花びらから抽出できる赤い色素は、わずか1%程度。その貴重な色を守り、腐敗を防ぎながら長距離輸送を可能にするために生まれたのが紅餅という加工技術でした。
生花を乾燥・発酵させ、軽量化し、長期保存できる形にする。その工夫は、現代のサプライチェーンにも通じる知恵です。わずか1%の赤を巡る先人たちの営みから、歴史、経済、地域文化を横断して学ぶことができます。
イタリア野菜に見る、地域ブランドのつくり方

米どころとして知られる河北町は、近年「かほくイタリア野菜」という新たな特産品のブランド化にも成功しています。寒暖差の大きい気候風土を生かして育てられる鮮やかなイタリア野菜は、都内の有名レストランやデパートでも取り扱われるほど高い評価を得ています。
農業を取り巻く環境は、食の多様化や気候変動、後継者不足など、大きく変化しています。その中で、伝統的な米づくりだけにとどまらず、時代のニーズを捉えて新たな価値を生み出した取り組みは、アグリビジネスや地域創生を考えるうえで生きた教材となります。
地域の風土を読み解き、強みを見つけ、外へ伝わる形に変えていく。そこには、マーケティングや地域経済のリアルな学びがあります。
身近な動物園から考える、野生動物との共生
河北町の中心部には、24時間無料で開放されている「河北町児童動物園」があります。地域住民に親しまれているこの小さな動物園は、県内の傷ついた野生動物を保護・リハビリする「鳥獣救護所」としての役割も担っています。
今年、県内で保護されたツキノワグマがこの動物園にやってきました。全国的にクマの出没や人命・農作物への被害がニュースになる中、クマの吐息や佇まいを間近に感じることは、画面越しに情報を受け取るだけでは得られない体験です。
命を間近に感じながら、「人間と野生動物が互いの領域を守りつつ共生するにはどうすればよいのか」を考える。そこには、環境、暮らし、命の距離感を考える学びがあります。
共につくる、河北町の教育旅行
河北町には、伝統を守る「継承」、新しい挑戦を生む「革新」、そして野生動物との「共生」という、現代社会のさまざまなテーマにつながる学びがあります。
現在、河北町では今年度中の教育旅行誘致・受け入れ開始を目指し、体制づくりを進めています。学校の先生方や生徒の皆様の声を聞きながら、地域ならではの学びの場を共につくっていきたいと考えています。
歴史の知恵と現代の挑戦、そして生命のリアルが交差する山形県河北町。ここには、生徒たちが自ら問いを見つけ、地域と社会を考えるための探究の入口があります。