【探究の種】人と出会い、地域と自分をつなぐ探究 ―被災地・石巻の今を知る―

宮城県石巻市では、震災の記憶だけでなく、人と人とのつながりの中から新たな挑戦が生まれています。本記事では、一般財団法人まちと人との取り組みを通して、高校生や大学生が地域に入り込み、地域で活動する大人たちと出会いながら、自分自身の「好き」や価値観を探究していく学びを紹介します。地域を知ることが、自分の未来を考えるきっかけへとつながっていく、そのプロセスに迫ります。

宮城県石巻市。

東日本大震災で大きな被害を受けたこの地域は、復興の歩みを重ねる中で、水産業や森林資源、地域文化といった土壌に加え、市民活動や移住者による多様な挑戦が生まれるまちへと歩みを進めてきました。

一般財団法人まちと人とは、そんな石巻をフィールドに、「まちが人を育み、人がまちを豊かにする」循環を目指し、高校生と地域をつなぐさまざまな取り組みを行っています。

震災の風化、その先にある「地域との距離」

震災から15年。

今の高校生の多くにとって、東日本大震災は「教科書の中の出来事」になりつつあります。

復興が進み、日常の中で被災の痕跡を感じる機会が減るにつれて、地域の課題や魅力、そこで生きる人々の思いに触れる機会も少なくなっています。

石巻を「何もないまち」だと思ったまま、限られた選択肢の中で将来を考える若者も少なくありません。

しかし石巻では、復興の歩みの中で多様な人が出会い、新しい挑戦が次々と生まれています。

私たちは、こうした石巻の隠れた魅力を、地域内外の若者に知ってほしいと考え、若者と地域をつなぐ取り組みを行っています。

地域に飛び込み、「自分の好き」を探す

――まきボラという仕組み――

その取り組みの一つが、「石巻で自分の好きを見つけるボランティア『まきボラ』」です。

高校生・大学生が、地域の企業やNPO団体でボランティアを行うプログラムで、2023年夏の開始以来、石巻の高校生を中心に延べ406人が参加し、129件のボランティア活動を実施してきました。

特徴は、単なる「お手伝い」ではなく、地域で活動する大人たちと共に現場に立ち、仕事や活動への思いを聞きながら、自分自身の関心や価値観と向き合う「探究の入り口」として設計されている点です。

例えば、森林資源を活用する企業で活動した学生は、山に入る体験を通して次のように語っていました。

「林業について何も知らなかったけれど、実際に山に行き、事業所の方のお話を聞く中で、自分の住む地域の環境問題への関心が深まりました。ニュースでは分からないことばかりで、山と海がつながっていることを知りました。」

体験を通して、社会課題が自分の暮らしや地域とつながり、「自分ごと」へと変わっていきました。

“被災地を学ぶ”だけではない

――石巻での教育旅行――

石巻には、震災を経験した地域だからこそ生まれた、多様な人のつながりや挑戦があります。

震災伝承や防災学習に加え、地域で活動する人々と出会い、対話し、一緒に時間を過ごすことは、単なる知識の学びを超えた経験になります。

教育旅行で訪れたある高校生は、石巻で運営されている本のコミュニティスペース「石巻まちの本棚」を訪問し、「地域で活動する」「地域で挑戦する」という生き方に触れ、その経験を次のように話していました。

「今までは普通に進学して、何となく企業に就職できればいいと思っていたけれど、こんな生き方もあるんだと思いました。ここ以外の場所でも出会った石巻の大人たちは、みんな楽しそう。もっと早く来たかったです。」

人との出会いを通して、自分自身の価値観や将来について考え始めること。

それは、教室の中だけでは得ることのできない学びです。

地域を見る視点が変わると、自分の未来も変わる

石巻は、東日本大震災を経験した「被災地」として記憶される地域です。

しかし、人と深く関わる中で、「挑戦する人がいるまち」としての姿にも気づかされます。

そして、その視点の変化は地域理解にとどまりません。

「自分は何に興味があるのか」
「どんな形で社会と関わりたいのか」

地域を知ることは、自分を知ることにもつながっていきます。

身近な地域に入り込み、人と出会い、体験し、問い直すこと。

その積み重ねの中で、自分なりの問いや生き方が形づくられていきます。

一般財団法人まちと人とはこれからも、地域のリアルな現場や人との出会いを通して、若者が自分自身の問いを育み、自分の「好き」や生き方を探究する機会を地域の中でつくり続けていきます。

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