モリンガを「知る」から「触れてみる」へ
「モリンガ」という植物をご存じでしょうか。北インド原産の亜熱帯性植物で、葉などが食品として利用されるほか、近年はCO₂吸収能力の高さから環境分野でも注目されています。
街場のキャンパスでも、これまで埼玉大学・藤野毅先生の研究や、宮古島での植林活動を通してモリンガの可能性を紹介してきました。
今回は、そんなモリンガを「記事で知る」だけではなく、「実際に見て、触れてみる」ことで何が見えてくるのか。昨年度、さいたま市の見沼田圃で行われたモリンガの収穫・採取作業に参加した体験を振り返ります。

見上げるほどに育ったモリンガ
畑に入ってまず驚いたのは、その高さです。
細い幹がまっすぐ伸び、その先にたくさんの葉を広げるモリンガ。人の背丈を大きく超えるものもあり、畑の中に入ると、まるで小さな森のようでした。
実際に枝葉を採取していくと、写真や資料を眺めているだけでは気づかなかった発見があります。白い花を咲かせているもの、細長い莢(さや)をつけているもの。収穫前には青々としていた畑も、作業が進むにつれて幹が見える景色へと変わっていきました。
「植物を知ること」と「その植物の中に入って触れること」は、やはり少し違います。
数字から見えてくる、驚きの成長力
さいたま市では、埼玉大学、ジーピック合同会社と連携し、「見沼田圃グリーンカーボン推進事業」を進めています。遊休農地を活用してモリンガを栽培し、CO₂吸収量や固定量を明らかにする実証実験です。
さいたま市が公表している令和6年度の実証では、5月初旬に種をまき、7月末には8割以上が発芽。8月末には高さ3m近く、10月末には5m近くまで成長しました。また、1本あたりのCO₂吸収量は約3.0kg-CO₂と算出され、36~40年生の杉1本と比べて約2~3倍に相当する結果が示されています。
数か月でこれほど成長する植物を目の前にすると、「なぜこんなに早く育つのだろう?」という素朴な疑問が生まれます。そして、そこから探究はさらに広がっていきます。
「CO₂を吸う植物」で終わらないから面白い
「CO₂を多く吸収するなら、たくさん植えればいいのでは?」とも思います。
しかし、モリンガは熱帯性の植物で、見沼田圃では越冬できません。枯れたまま放置すると微生物によって分解され、吸収したCO₂が再び大気中へ放出されます。
そのため、幹や根を「バイオ炭」にして土壌に戻し、炭素を貯留する研究も進められています。一方で、モリンガの幹は約8割が水分。乾燥や炭化には工夫やコストが必要だという課題も見えてきています。
「環境に良い植物」と一言で済ませられないところが、モリンガの面白さです。

一本のモリンガから、どんな探究ができる?
なぜモリンガはこれほど早く成長するのか。
気温や土、水分量によって育ち方はどう変わるのか。
CO₂吸収量はどうやって測るのか。
さらに、「遊休農地を活用した栽培は地域にどんな価値を生むのか」「収穫した葉や幹を、食品や資源、商品としてどう生かせるのか」と考えれば、問いは理科だけにとどまりません。
環境、農業、地域づくり、経済。一つの植物から、さまざまな学びがつながっていきます。
最初から大きな社会課題を設定しなくても、「なぜこんなに大きくなるんだろう?」という小さな驚きから、探究は始められるのかもしれません。

今年も、モリンガの変化を見に行きます
そして今年度も、9月末ごろにモリンガの収穫・採取作業へ参加する予定です。
昨年度と比べて、今年のモリンガはどのように育っているのか。高さや葉の量、花や莢の様子に違いはあるのか。天候や気温の違いは、成長にどのような影響を与えているのか。
一度見て終わりではなく、同じ場所をもう一度訪れ、変化を比べてみる。それもまた、探究の大切な入り口です。
今年はどんな「探究の種」に出会えるのか、今から楽しみにしています。
モリンガから広がる「探究の種」
街場のキャンパスでは、これまでにもモリンガをテーマに、その研究や地域での実践を紹介しています。
ぜひ、これまでの記事とあわせてご覧ください。
